「やりがいのある仕事でチャレンジしていきたい」「幅広いスキルを身に着けたい」「早いうちに成長できる機会がほしい」という方にとって、スタートアップへの転職は魅力的な選択肢のひとつです。
一方で、長期的なキャリアプランを検討するときには「結婚」「出産」「育児」などのライフイベントも考慮しなくてはならず、その点においてスタートアップへの転職を検討するには不安要素も多いかもしれません。
女性の場合は、肉体的にどうしても出産・育児休暇でブランクが空いてしまうこともあり、将来的な展望に悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
そこでこの記事では、女性ならではのお悩みやライフイベントに着目しつつ、スタートアップに転職するときに知っておきたいポイントについて紹介します。
スタートアップの基礎知識
まずは「スタートアップ」について少し詳しく紹介します。
スタートアップとは
「スタートアップ」という言葉に明確な定義はありません。
経済産業省の資料を参考にすると、「新規性のある事業や技術をもちいて、短期的な株式上場(IPO)や事業売却(M&A)を目指す、創業から間もない企業」がスタートアップに当てはまります。
若い企業であればスタートアップと理解されることも多いですが、創業から短期間のうちにEXIT(株式上場や事業売却)を目指すという点が特徴的です。
「ベンチャー」もまた明確な定義はありません。一般的にはスタートアップと同じような意味で捉えられることが多いです。
あえて呼び分けるとすれば、ベンチャーよりもスタートアップのほうがEXIT(IPOやM&A)を強く意識していること、また新しいビジネスモデルや新しい技術を重視していることが挙げられます。
参考:行政と連携実績のあるスタートアップ100選|経済産業省
スタートアップの事業フェーズとは
スタートアップやベンチャーの場合、事業が安定するまでの期間は4つの「事業フェーズ」に分けられます。
シード期 | 創業前後の段階。事業の構想段階。 |
アーリー期 | 事業化前後の段階。 |
ミドル期 | 黒字化・収益拡大を目指す段階。 |
レイター期 | EXITを本格的に目指す段階。 |
一般的には創業初期に近いほど、人手も資金も不足しがちな状態とされています。業務量や責任範囲は広いですが、それだけ幅広い業務に携わる経験ができます。
ミドル期以降、事業が安定しはじめると徐々に組織体制も整ってくるでしょう。少しずつ専業化していき、各チームごとに専門性のある業務内容とスキルが求められていきます。
ちなみに就業規則が作成されるのは従業員が10名以上になったとき、また一般的に人事制度が整ってくるのは従業員が30~50名以上になったときです。
結婚や出産などのライフイベントがすでに間近に迫った予定なのか、それとも将来的な希望なのかによって、今できる選択が変わってしまうこともあるでしょう。
スタートアップの組織体制や働き方はライフイベントにも大きく影響するため、事業フェーズを踏まえたうえで自分の希望する働き方・キャリアプランを検討していくのがおすすめです。
未経験の業種でもスタートアップに転職できる?
未経験でもスタートアップに転職することは不可能ではありませんが、事業フェーズによっては転職が難しいこと、また転職後も自学自走していく必要があることを念頭に置いておきましょう。
シード期やアーリー期では、1人で事業やプロジェクトを牽引できるスキル・経験が求められる可能性は高いです。
しかし新しいビジネスモデルや新しい技術を扱う事業では、これまで多くの事業やプロジェクトを経験していた人だとしても、知識・スキルともに最新情報を吸収していくことが求められるでしょう。
ミドル期・レイター期以降であれば組織基盤が整ってきて、未経験の人材を育成するための研修などの仕組みを用意している場合もあります。
ただしこの場合も、自分から意欲的に知識・スキルを身に着けていくことが求められるでしょう。スピード感をもって成長することに魅力を感じられるのであれば、スタートアップはよい環境となるかもしれません。
スタートアップで働く女性のイメージ
スタートアップへの転職を検討するにあたって、自分の働き方について理想像を言語化しておくことが大切です。あくまで一例ですが、スタートアップで働く女性のイメージについて紹介します。
スタートアップで働く理想像
男性の育児休暇の必要性がとなえられはじめて久しく、以前と比べると出産・子育ては夫婦がともに向き合うべき課題であるという価値観も広まりつつあるでしょう。
しかし実際のところ、肉体的にどうしても女性は出産による休養期間が必要となります。また夫と2人で分担するにしても、子供との限られた時間を大切にしたいと考える方が多いのではないでしょうか。
- 若年層を中心とした風通しのよい職場
- 熱意をもって仕事にとりくみダイレクトに成果を出す
- 幅広い業務を経て産休・育休までにリーダー、マネージャーを経験
- 育休・産休のあともリーダー、マネージャーとして復職
- リモートワークを織り交ぜつつ、子育てと仕事を両立
- 効率よく短時間勤務しながら、幼稚園への送り迎え
女性ならではのライフイベントも含め、上記のようなスタートアップでの働き方を想像している方が多いのではないでしょうか。
詳しくはメリット・デメリットの見出しでも紹介しますが、スタートアップでは比較的自由度の高い働き方をしやすいので、理想通りに転職を実現できる可能性は大いにあります。
出産・育休で長期的なブランクが空いてしまう前に、幅広い業務内容・ポジションを経験しておきたい方にとっては、スタートアップへの転職がよい選択になるかもしれません。
理想どおりにいかないケース
こちらもあくまで一例ではありますが、スタートアップへ転職しても理想通りの働き方が実現できないケースとしては以下のような場合が考えられます。
- 社員雇用だけを目的に転職してしまう
- 年収アップだけを目的に転職してしまう
- 働き方の自由度の高さだけを目的に転職してしまう
- リモートワークや短時間勤務は叶うが、それでも忙しすぎる
スタートアップでは成果主義的な考え方に基づき、働き方や働く時間についての自由度は高い傾向があります。
しかしそれは「各人のパフォーマンスを発揮するため」という目的があるからです。あくまで事業や組織の成長にフォーカスし、全員が熱意をもって事業の成長やEXITに突き進んでいくことが求められます。
スキルアップやキャリアアップを目指すとしても、自分から行動を起こしていかない限りは、成長や成果に結びついていきません。
雇用条件や自由度の高さだけを目的にスタートアップへ転職するのではなく、「自分が熱意をもってやりたいこと」を実現できるかどうかを基準にしましょう。
また仕事と育児を両立したい場合、リモートワークや短時間勤務ができたとしてもハードな毎日になる可能性が考えられます。1日のほぼすべてが仕事と育児に追われてしまうことを想定し、ある程度タフな日々になることを覚悟しておいたほうがよいかもしれません。
女性がスタートアップで働くことのメリット・魅力
スタートアップで働くことのメリットについて、女性ならではの観点も踏まえて紹介します。
- 性別にかかわらず対等に評価してもらえる
- スピード感をもって幅広い経験・スキルを得られる
- 柔軟な働き方がしやすい
- 女性のライフステージの変化への理解度が高い
一般的なメリット・デメリットについては「スタートアップに転職するメリット・デメリットは?やりがいとリスクを把握して転職を成功させよう」でも紹介しているのであわせて参考にしてみてください。
性別にかかわらず対等に評価してもらいやすい
スタートアップやベンチャーでは、性別にかかわらず対等に評価してもらいやすいのがメリットのひとつです。
女性の転職理由を調査するアンケートで、「人間関係を改善したい」という項目が必ずと言ってよいほど上位に挙がります。
世の中全体がハラスメントや平等な働き方に目を向ける風潮になってきてはいますが、実態としては「女性だから下に見られた」「女性と男性とで業務内容が違う」という経験をされている方も少なくないのでは。
スタートアップやベンチャーで働いている人は比較的若年層が多いこともあってか、そういった旧態依然とした状態になりにくいのが特徴的です。
成果主義の傾向が強いこともあり、性別や年齢に関係なく、能力や実績を示すことができれば評価されます。
スピード感をもって幅広い経験・スキルを得られる
スタートアップやベンチャーでは1人あたりの裁量権が大きい傾向があります。そのため業務範囲も広くなりやすく、幅広い経験・スキルを得ることにつながるでしょう。
効率的に業務をこなすためのタフさと処理能力は必要となりますが、スピード感をもって成長するよい機会になります。
中長期的なキャリアプラン、ライフプランを考えたときに、「出産・育児前にできるだけ経験を積みたい」と考えている方も多いのではないでしょうか。
成果主義的で平等に評価されやすいスタートアップでがむしゃらに働くことで、復帰後のキャリア形成のための財産になるかもしれません。
柔軟な働き方がしやすい
スタートアップやベンチャーでは、フレックスタイム制やリモートワークなどが導入されていることが多く、時間や場所にとらわれずに働きやすいのもメリットです。
通勤時間が減ることで子どもと過ごす時間が増えたり、フレックスタイム制を利用して子供が寝たあとにタスクを消化できたり、といったメリットにもつながります。
2020年以降のコロナ禍では多くの一般企業も取り入れていた制度ですが、いわゆるアフターコロナでは出社勤務に戻す企業も増えてきたようです。
しかしスタートアップやベンチャーでは、依然としてリモートワークを織り交ぜつつの働き方を維持しているケースが多く見られます。よい仕組みはすぐに取り入れて制度を整える、というのもスタートアップならではの特徴かもしれません。
成果主義的な見方をすれば、あくまで成果を出すこと、そのためにチームや会社がうまく回っていることがクリアできれば、働き方は些細な問題と捉えることもできます。
参考:出社率の実態と今後の意向(2023年春)|ザイマックス総研の研究調査
女性のライフステージの変化への理解度が高い
女性は妊娠・出産・子育てによって大きくライフスタイルが変わりますが、スタートアップやベンチャーではこの変化への理解度が高いのも特徴です。
若年層のメンバーが多いことで、自分ごととして捉えやすいことも理由の1つでしょう。
一方で古い体制が長く続いてきた企業の場合、重要な仕事を任せられなくなってしまったり、遠回しに退職を勧められてしまったり、という実態が残念ながらあるようです。
女性のライフステージの変化への理解がある企業であれば、出産や育休取得にあたっても快く送り出してくれるでしょう。
偏見や差別がなく、ライフステージの変化にも向き合ってくれる企業に転職することで、ストレスの少ない環境で働くことにつながります。
女性がスタートアップで働くことのデメリット・注意点
女性がスタートアップで働くことのデメリット・注意点は以下のとおりです。
- 基本的にはハードワークになりやすい
- 制度が整っていない可能性がある
- 責任感から休みづらさを感じる場合がある
- 年収が下がったり倒産したりするリスクがある
女性ならではの観点も交えつつ、それぞれ詳しく解説していきます。
基本的にはハードワークになりやすい
組織体制が万全に整っていない段階のスタートアップやベンチャーでは、1人あたりの裁量権や責任が大きく、ともなって業務量も多い傾向があります。
フレックスタイム制やリモートワーク制度を利用したとしても、主体的になって効率化や仕組み化を進めていかないと、業務量に追われてしまうという事態に陥るかもしれません。
とくに創業から間もない企業ほど、人材不足や資金不足からハードワークになりやすいでしょう。
ミドル期やレイター期など、事業・組織が順調に拡大している場合であれば、ある程度余裕のある業務量となっているケースも多いです。
ライフステージとキャリアプランとを照らし合わせつつ、事業フェーズも踏まえて転職を検討するのがよいでしょう。
制度が整っていない可能性がある
女性なら誰でも気になる「育休制度」や「生理休暇制度」ですが、スタートアップやベンチャーではあまり整っていないケースがあります。
というのも、これから事業や組織を拡大していく段階のフェーズでは、そこまで手が回っていない可能性があるのです。
事業や組織が安定してくると、むしろ一般企業よりもユニークな福利厚生や休暇制度を設けるスタートアップが多くなってきます。その過程で、自分自身の意見も反映されていくことを魅力と捉えることもできるでしょう。
また制度が整っていないスタートアップであっても、個々人の事情にあわせて柔軟に対応してもらえる可能性は高いです。
責任感から休みづらさを感じる場合がある
スタートアップやベンチャーでは1人あたりの業務範囲が広いことで、仕事が属人化しやすいという面があります。
生理やホルモンバランスの乱れ、子供の体調不良など、突発的な事情から休みたい場合もあるでしょう。
そんなとき「自分がいないとプロジェクトが止まってしまう」「自分が休むことで別の人の業務が増えてしまう」などの懸念から、休みづらく感じてしまうかもしれません。
しかしスタートアップでは体調が回復したら午後から働く、在宅で体調をうかがいながらできるだけ働く、といった柔軟な対応もしやすいケースが多いです。
年収が下がったり倒産したりするリスクがある
スタートアップやベンチャーへ転職すると、一時的に年収が下がるケースがあります。
たとえば外資系企業のミドル~ハイクラスで働いていた場合や、役員として働いていた場合には年収が下がる可能性があるので、事前にすり合わせておくのがよいでしょう。
事業がうまく成長しなければ、撤退や倒産の可能性もあります。危機的な状況を体験するという意味ではキャリアに活かせる経験にもなり得ますが、一時的に職を失ってしまうのは大きなリスクです。
すでに子供がいる家庭や、結婚・出産などを近々に控えている場合は大きな不安材料となってしまいます。対策としては、慎重に市場規模や企業の経営状況を調査しておくのがよいでしょう。
ちなみにスタートアップは給与が少ないというイメージがあるかもしれませんが、近年はスタートアップ業界の給与水準が上がってきています。日本経済新聞社による「NEXTユニコーン調査」(2023年)では、調査対象となった未上場企業78社の平均見込み年収が710万円という結果でした。
参考:<NEXT Unicorn>平均年収、700万円超え|日本経済新聞
スタートアップに転職するときのポイント
スタートアップへの転職を進めるにあたって、意識しておきたいポイントをまとめます。
- キャリアプラン・ライフプランを言語化しておく
- 事業の将来性や企業の資金調達状況を確認する
- 経営陣の経歴や、会社の雰囲気などを確認する
- スタートアップ特化の転職エージェントを利用するのがおすすめ
上記について詳しく解説していきます。
キャリアプラン・ライフプランを言語化しておく
これから企業を探しはじめるにしても、すでに面接や面談の予定があるにしても、自身のキャリアプラン・ライフプランを言語化しておくことは大切です。
キャリアプランについては「最終的な理想像」「理想像に近づくために今やるべきこと」「その理由」などをまとめておきましょう。
出産・育児などの将来設計も踏まえ、妊娠中や復職後の働き方についても考えておくことで、より明確にプランを言語化していけます。
これらを踏まえたうえで「なぜスタートアップに転職したいのか」「なぜその企業に転職したいのか」を整理してみてください。自身の現状と将来を見つめ直しつつ、転職の意向を固めていく助けになるはずです。
言語化した内容について、面談や面接でもしっかり伝えられるように、メモやドキュメントで整理しておくのがおすすめです。スタートアップやベンチャーの採用では、事業への共感や熱意が重視されやすい傾向があります。
事業の将来性や企業の資金調達状況を確認する
デメリット・注意点としてお伝えしたように、創業間もないスタートアップやベンチャーでは、事業がどう転ぶかは掴みきれません。
その対策として、転職したい企業が見つかったら、事業(市場規模)の将来性や企業の資金調達状況を調査しておきましょう。
いくらプロダクトがよくても、市場規模が拡大しなかったり、思うようにPMF(プロダクト・マーケット・フィット)しなかったりする可能性もあります。
また資金繰りが困難な場合は、事業を伸ばすためのリソースが確保できずに縮小・撤退という可能性も。
ライフプランやキャリアプランを実現していくために、準備できる部分はしっかりと準備しておきましょう。
経営陣の経歴や、会社の雰囲気などを確認する
経営陣の経歴や会社の雰囲気なども事前にチェックしておくのがおすすめです。
経歴はすべてではありませんが、創業の背景などが分かれば事業や社風に共感できるかどうかの判断材料になります。また、もし起業歴があるメンバーがいれば、その会社がどうなったのかを知ることで経営陣への信頼性を測ることにもつながるでしょう。
会社の雰囲気を知るのはなかなか難しいかもしれませんが、できれば内定受諾の前に会社を訪れてみるのがおすすめです。従業員の働き方や出社率、表情などを見てみることで、自分に合いそうな雰囲気かどうかを感覚的に掴むことができます。
同性である女性の従業員と対面話せる機会があるとなお良いでしょう。可能であれば機会をもらえないか打診してみてください。
求人情報の文字面だけでなく、なるべく実態に近い情報を掴んで、転職を成功させましょう。
スタートアップ特化の転職エージェントを利用するのがおすすめ
自分とマッチ度の高いスタートアップかどうかを調査しようと思っても、そもそもホームページや求人媒体に載っている情報が少なく、実態のイメージが湧きづらいことがよくあります。
そのためスタートアップへの転職を検討するときには、スタートアップ業界に特化した転職エージェントを利用するのがおすすめです。
スタートアップ業界に特化しているため、VC(ベンチャーキャピタル)や起業家などとの関わりも築いており、独自の情報網を有しています。
豊富な情報の中から、自身のキャリアプラン・ライフプラン、そして企業文化や事業フェーズなどを踏まえて、マッチ度の高いスタートアップを提案することが可能です。
女性ならではのライフイベントなども踏まえて相談に乗ってくれるので、とくに初めてスタートアップ業界を志す女性にとって心強い味方になってくれるでしょう。
『Startup Frontier』を運営するProfessional Studioは、スタートアップに特化したキャリア支援を行っています。エージェントはスタートアップ業界経験者のみ。キャリアや転職に関する相談をご希望される方は、以下よりお気軽にお問い合わせください。